Log4 「Dear, Suite bergamasque No.4”Passepied”」


 手の形を作る。
 駆け出すような旋律に思いをはせて、重苦しさは吹き飛ばして、軽やかさが軽々しさとならないように。そう頭の中を整理する暇もなく、心を落ち着ける余裕もなく、指を先走らせてしまう、いつものこと。
 だって、わくわくしてたまらない! どう名状すればいいのだろう? この曲を。
 左手のスライドを何度ひっかけても心は沈まず、右手の跳ねと滑りを混同しても諦められず。
 いったい何回、この曲に、何を託し続けたかわからない。
 たったの四分、組曲の終わりを告げるための始まりが、絶えず生活のあらゆる場面でよみがえり、そのたび生活が縁どられ彩られていく。たゆまぬステップが、日常のふとした瞬間、歩むたびにとても合うのだ。その一方で、星のようなきらめきと、怪しげな深みを含んだ魂の揺らぎが現れて。足元は、それでも古典舞踊を刻む。ステップに急き立てられて、日常を歩む勇気をいつも得る。
 何度でも向き合おう。何度弾けなくても、晴れた日も雨の日も、うれしい時も悲しいときも。そうしてまた日常によみがえる、日々の伴奏、古典舞踊。
 時には、なんら優れたところなんて無いと、そう自棄になって涙しながら。
 はたまた、自分でもおかしいくらい酔いしれて、旋律に身を任せながら。
 そうしていつか。
 光へ突き抜けるこの曲のように、暗闇の先、今は手の届かぬあの人に届けたい。
 ともに踊りましょうと、そう典雅な微笑みを浮かべ、あの人に手を伸ばす日に思いをはせながら、鐘の音を。終わりの終わりを歌い上げる、鐘の音を。何度でも同じ鐘の音を。
 さあ次には何を奏でよう? 愛しきクロード、あなたから今日も離れられないわ。
 眠るような歌うようなBの単音が誘うあの曲はどうかしら。
 クロード、あなたから離れ、あの人のための曲を弾くその日まで。わたしは今日も夢の中。

***

お題:「終わりの始まり」「夢の中で」 「ノーマルエンド(エンド内容)」
Twitterでの「#深夜の真剣文字書き60分一本勝負」に参加したもの
前回の「夢」に続くドビュッシー愛の産物です。ベルガマスク組曲「パスピエ」より


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